暗渠をひもとく3つの軸

 暗渠に気がつくことで、それまでばらばらに「点」として捉えていた都市の中の【景観】は、失われた川という「線」で関連付けられつながっていく。

 この「線」は、失われた水系という空間的な広がり「面」を持っている。都市を覆うその広がりからは、普段意識している鉄道網や道路網で結ばれた都市とは全く別の【空間】が立ち上がってくる。

 さらにこの【空間】をひもとくと、そこには水にまつわる歴史や暗渠化の歴史、さらにかつて川ぞいに暮らした人々の物語といった【時間】も潜んでいることがわかる。 

 そして空間や時間から再び景観に立ち戻ったとき、目の前の景観は、点でありながら、空間と時間の奥行きを持った、全然別の景観として見えてくる。

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暗渠サインとアンキョスケープ

”そこが川であったことを示す手がかり、目印となるもの”を指す言葉として「暗渠サイン」という言葉がよく使われてきた。ただ、それらには必要十分条件を満たさなかったり、必ずしも明確な因果関係があるわけではないものも少なくない。

 とはいえ、暗渠に特徴的な景観は確かに存在する。そこで「暗渠サイン」も包括する上位概念として、”暗渠特有の景観”や”それを構成する要素”を「アンキョスケープ」(暗渠+ランドスケープ)と呼ぶことを提唱したい。

 アンキョスケープにはまず、暗渠化のタイミングを基準点とした過去と未来という成因の軸がある。また、そこでみられる要素はモノ/構造物から環境/空間まで、グラデーションがある。代表的な事例をこの軸に沿ってまとめたのが右の図だ。

 これらは”暗渠を見つけるため”の手がかりではなく、”暗渠の景観を起点としてそこに孕む空間や時間を探るため”の手がかりなのだ。そこには川と地形の関係、川と空間利用の関係、川と人との関係性の時代による変化や、暗渠化後の時間の流れの中での変遷が刻まれている

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